本日(2022年6月28日)の日経紙のスクランブルのPEGレシオの解説は根本的部分で間違っている。

本日(2022年6月28日)の日経紙の「スクランブル」で成長株の株価指標としてPEGレシオを取り上げていました。

しかし、紙面におけるこの指標の計算の仕方には致命的な欠陥があります。

まあ、日経紙の記者は投資に関してはほぼ素人で仕方ない面がありますが、当然記事を書くにあたって説明を受けているはずで、説明したプロが間違っていたのか、記者が正しく理解できなかったのかは不明ですが、

これほどの間違いが、全国紙に掲載されるのはいくら何でもまずいだろうということでブログにおいて報告を行うことにしました。

ただし、正しく説明しようとすると、数値を用いて説明した方がわかりやすいため、何度かに分けて説明することになります。

ただし、どう説明すればわかりやすいかに腐心しており、現時点ではまだ、方向性が定まっているわけではなく、追々記事を追加して行くつもりです。

 

 

さて、記事の内容ですが、グロース株のバリュエーションがかなり下がってきたので、そろそろ打診買いを始めた投資家がいるというもの。

そして、グロース株の投資家が指標として使っているのが、PERを成長率で割ったPEGレシオという指標だということ。

つまり、PEGレシオ=PER/増益率ですが、数学が得意な人はすぐわかりますが、PERは倍、増益率は%ですから、例えばPER10倍、増益率10%なら10/10%=100なんてことになります。

紙面ではこれが2以下なら割安とか言っていますので、全く単位の異なる数字になっています。

これはどういうことかと言えば、増益率が10%なら10として、10/10=1という乱暴な計算をします。

厳密に言えば、

PEGレシオ=PER/(増益率×100)という計算です。

ただし、大目に見て、ここまでは問題がないとします。

 

 

しかし、そのPEGレシオの算出方法として、PERを当期の増益率で割っているのが実は大問題なのです。

これはPEGレシオ同様に、PERと成長率の関係を見るときにも同じなのですが、PERを使う場合には、絶対当期増益率は使ってはいけないのが大原則となります。

そうではなく、必ず来期もしくは来期以降3年とか5年の年平均成長率を使わなければならないのです。もちろん、PEGレシオの場合は最低限、来期以降3-5年の年平均成長率でしょう。

 

なぜかと言えば、PERの算出には当期のEPSを使うわけですが、その前提は当然、当期の成長率はすでにPERに織り込まれているからです。

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、当期の成長率を使ってしまうと、その成長率が少し狂うと、割安だったものがいきなり実は割高だったとなってしまうためです。

 

 

例えば、日経コラムの表にあって、コラム内でも解説しているアンビスHDという銘柄の当期増益率は47%で、当期予想EPSは68.1円です。

株価は3,745円(記事掲載日の前日の株価)ですので、PERは55倍です。

ここからPEGレシオは1.17倍になり、PEGレシオの割安の基準となる2を下回っているから割安圏にあるという説明です。

しかし、当期の増益率と当期のPERを同時に使うと、実は業績が少し修正されるだけで、指標が大きく動いてしまうのです。

仮に、当期の増益率が修正されて47%から30%に下がったとします。すると、EPSが下がるのでPERは上がり、そのPERを割る増益率も下がるので、PEGレシオは一気に2.07倍と割高圏になります。

実はPERも増益率も当期で計算すると、PEGレシオ=PER/増益率(厳密には増益率×100)で、PERは株価/EPSで、EPSは前期EPS×(1+増益率)ですから、これで式を変形すると、

PEGレシオ=株価/((前期EPS×(1+増益率))×(増益率×100))となって、実はPEGレシオは当期の増益率が変動するだけで、その二乗に反比例して動いてしまうのです。

そんな使い方は絶対してはだめで、当期PERに対して、使う増益率は必ず次期から3年から5年程度の年平均増益率を使うべきなのです。

 

 

と、ここまで書いてきましたが、多分、当ブログの読者の誰も理解できないかなーーとは思いますので、さらにデータを用いてブログにて数回に分けてわかりやすく解説しようと思います。そもそもこんな話が日経に載ってしまうくらいですから、プロでも本当に理解しているのか疑問と言えば疑問です。ただし、記者があまり詳しく聞かずに勝手に計算したのかもしれませんが。

なお、この考え方を使うと、中長期的に15%成長する企業のPERはどの程度が妥当かとかいうことも説明しやすくなります。

ですから、とりあえず、時々このブログをチェックしていただき、追加記事があれば、追々解説を読んでもらえたらと思います。

 

 

 

 

とりあえず今回はここまでとします。

 

ただし、説明する段取りをどこからすればいいか構想中で、次回までの間は少し時間を要することになるだろうとは思っていますが。